Digital Gadget #100

プログラムが書けなくても開発できる

オンラインアプリケーションの台頭


■ まず最初に。1998年に開始したこの連載も、今回でなんと 100回目を 迎えることができました。この一風変わった連載を読み続けてくださった 読者の皆さんに感謝するとともに、記事発表の場を設けてくださった 技術評論社/SoftwareDesign 編集部の皆さんに感謝したいと思います。

記念に DigitalGadget.jp ( http://digitalgadget.jp/ ) というサイトを立ち上げました。 過去の記事に加筆したものを順次公開していく予定です。

100回というと、8年以上の期間です。 その間、マシンパワーもハードディスクの容量も、 ネットワークの速度も飛躍的に向上しました。 その一方、コンピュータでやっている仕事が あまり違わない気がするのはなぜなのでしょうか? その一方「デジタルガジェット」という枠組みで、ワクワクしたり、 おもしろいと思えるような要素は、何年たっても不変的です。 これからも次々と技術力を生かした(浪費した?)デジタルガジェットの 登場を望み、本記事でも続々と紹介していきます。

■ プログラムしなくても動作するプログラム言語

この 8年間でコンピュータの性能は大幅に向上しました。 とは言っても、何かシステムを作ろうとすると、今だプログラム言語を使って 開発を行っていることには、なんら変わりはありません。 遠い未来には「あれとこれを、ひとつよろしく!」で 全て済んでしまうような技術が生まれてくるのでしょうか?

たとえばジャンボジェットなどの航空機の製造、 大規模な建築の世界や、宇宙開発の分野では、エンジニアリング技術が極限まで進んでいます。 見積もりや、仕様変更までもがシステマチックに行われています。 もちろん職人芸に頼っている部分も多いかと思いますが、 その大規模なプロジェクトをスムーズに進行させるノウハウには驚嘆するばかりです。

近所の高層マンションが1年ちょっとという短い期間のうちに みるみる巨大化していくのを見ると、 これがもしソフトウェア開発だったらどうなるんだろうと思い悩んでしまいます。

■ Yahoo! Pipes

http://pipes.yahoo.com/

Yahoo! Pipes は Rewire the web とのタイトルどうり、Web をパイプでつないで 新しいサービスを生み出すことのできる仕組みです。 由来は UNIX のコマンドを組み合わせて複雑な操作を行うパイプ「|」を意味しています。 様々な Web サイトが提供している RSS feed 出力をまとめ上げたり、フィルタをかけたり、 並べ替えたりすることができます。それこそ UNIX パイプを用いて Web の情報を まとめ上げる感覚です。 Web ブラウザの上で各部品をドラッグ&ドロップしながら構造をまとめ、 それぞれの部品を線でつないで細かなパラメータを設定するだけで 新しい Web アプリケーションが構築できます。 データの素材として利用できるのは Yahoo! Search, Yahoo! Local, Fetch, Google Base, Flickr です。Fetch を用いるとユーザが指定した RSS/Atom フィードを 取り込むことができます。 日本語文字列の扱いが今一歩ですが、 さまざまなアイデアをとても短時間に実現することのできるサービスです。 利用には米国 Yahoo! 用の ID(登録無料)が必要です。

■ Ning

http://www.ning.com/

Ning はソーシャルアプリケーションとも言える、新しい Web アプリケーション開発の仕組みです。 Netscape の開発者として知られているマーク・アンドリーセンが参画しているそうです。 Ning の基本は既存のアプリケーション部品を組み合わせて 新しい Web アプリケーションを開発することにあります。 プログラミング言語として PHP をベースとしています。 細かいカスタマイズや新しい部品を開発するには PHP を用います。 基本機能は無料で利用でき、より複雑で大規模な利用をする場合には $4.95〜$9.95 / 月 の追加費用で商用に利用することもできます。 サンプルとしてソーシャルブックマーク、動画共有サイト、写真共有サイトなど 見慣れたサービスを Ning で開発する場合の例が公開されています。 また誰かが公開しているサービスのコピー(クローン)を作成し、それをベースに カスタマイズすることによって、自分用の新しいサービスを簡単に作ることができます。

■ Coghead

http://www.coghead.com/

Coghead は主に業務系のアプリケーション開発に向いた、オンラインアプリケーション構築環境です。 各種部品が用意されており、それらの部品をドラッグ&ドロップするだけで Web アプリケーション構築が可能です。ビジュアル的に編集できるのは ユーザインタフェースの部品だけではなく、実際に入力された値を操作するロジックの部分も ビジュアライズされた形で編集することができます。 たとえばフォーム入力域に値が入力されたタイミングで何か操作を行うといったような、 イベントを契機としたロジックを組み込むことができます。 また外部のウェブサービスを取り込んで、各種ウェブサービスを統合化した マッシュアップアプリケーションを構築するための土場としても利用することができます。 プロジェクトマネジメント系、バグトラッキング系、ナレッジベース系、ドキュメント マネジメント系などのアプリケーション部品が用意されており、それらを組み合わせることができます。 プログラミングに詳しく無くとも、該当するビジネスロジックに詳しいユーザであれば、 手軽にワークフローを定義し、Web アプリケーションを構築できるのが Coghead の特徴です。

■ Dabble DB

http://dabbledb.com/

Dabble DB は表計算形式のデータや、Web上のデータを取り込んで Web アプリケーションを構築するためのサービスです。 直感的なインタフェースでデータベースアプリケーションを Web 上で構築できるものです。 複数のユーザ間でデータを共有するタイプの Web アプリケーションを作成できるのが特徴です。 Dabble DBのサイトには 7分でひとつのデータベースアプリケーションを開発してしまう例が 紹介されており、開発の手軽さをアピールしています。

■ Zoho Creator

http://creator.zoho.com/

Zoho Creator は表計算を基本とするデータベースアプリケーションを開発するための プラットフォームです。 Excel や CSV形式の表データを取り込んで、様々な操作を加えた後、 HTML 形式や PDF として出力することが可能です。 データが追加されたらメールを送付したりすることもできます。 Zoho Creator で作成したコンポーネントを Web ページに載せたり、 ブログに組み込んだりして利用することができます。 Zoho は他にも Zoho Writer(ワープロ)、Zoho Sheet(表計算)、Zoho Show(プレゼンテーション)、 Zoho Planner(ToDoリスト管理)といった オフィス系のアプリケーションを提供しており、それらと組み合わせて利用できるのが特徴です。

■ Gyre

http://gyre.bitscribe.net/

Gyre は Webブラウザ上で開発・デバッグが可能な Ruby on Rails 統合開発環境です。 特に Rails のデバッガとしての役割が大きく、手軽に利用できるデバッガ環境としての位置づけです。 環境構築が簡単なので、手軽に Ruby on Rails 環境を利用することができます。 試しに使ってみたり、Rails 開発スタイルを手軽に体験してみる場合にも役立ちます。



ここまでで紹介した他にも、オンラインフォーム作成サービスの Wufoo ( http://www.wufoo.com/ ) も便利に使えます。 作成したフォームを iframe や Web ページ埋め込みで利用することができます。 入力された内容はメールで受け取ったり RSSで取得することができます。 また、Realtime Applications 社の WyaWorks ( http://www.wyaworks.com/ ) でも 表を中心とした Web アプリケーションを容易に構築することができます。 Ajax の流行を追い風に、オンライン上で帰結する Web アプリケーション開発環境が 続々と登場してきています。これらのサービスの特徴は、プログラミングに詳しく無くとも 様々な部品の組み合わせとカスタマイズで定型的なアプリケーションを 手軽に構築できることです。

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ここで紹介した開発環境は、多機能でありつつも決まり切った機能の固まりである パッケージアプリケーションと、専用に開発したカスタムアプリケーションの 中間に位置するものです。 既製品とオートクチュール(注文制作)の両方の良いところを得ることのできる 開発環境であるとも言えるでしょう。

どんなにコンピュータパワーが向上しても、コンピュータ言語が進化したとしても プログラミングは無くならないように思えます。 また、プログラミングの楽しみ、頭を悩ませながら何かを作り上げる楽しみは、 いつの日も無くなって欲しくありません。 これから楽しみつつ開発でき、 さらに簡単に素早く開発できる環境に人気が集まってくることでしょう。


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