SIGGRAPH 会場となったサンディエゴ・コンベンションセンター


Digital Gadget #106

コンピュータグラフィックスの祭典 SIGGRAPH 2007 [前編]

~港と入江の町サンディエゴでみかけたガジェット、先進的ツール編

8月5日から8月9日の 5日間、 コンピュータグラフィックスに関する世界最大の学会・展示会である SIGGRAPH 2007 が開催されました。

今年の開催場所はメキシコ近く、海軍の街として知られる 米国カリフォルニア州サンディエゴです。 港には退役した巨大な空母が陣取り、圧倒的な存在感を誇っていました。

会場となったサンディエゴコンベンションセンターは カナダの現代建築家 Arthur Erickson 氏によって 1990年代に建てられたカンファレンスホールです。 丸くかたどられた吹き抜けが気持ちのいい、 使い勝手の良いカンファレンスホールでした。

今年は 2003年以来のサンディエゴでの開催でした。 世界 79ヵ国から約24,043人の参加者を集めました。 展示会場には約230社の出展がありました。 参加者数は昨年に比べて 22%増で、展示会の面積も 12%増 加したそうです。

今年は SIGGRAPH 期間中に大きな発表がありました。 それは SIGGRAPH ASIA 開催の発表です。 2008年12月にシンガポール、2009年冬に横浜で開催される ことが発表されました。

 SIGGRAPH 2007 公式サイト  http://www.siggraph.org/s2007/

 SIGGRAPH ASIA 2008 公式サイト  http://www.siggraph.org/asia2008/

2年に一度贈られる、Coons 賞は、Nelson Max 氏が受賞し ました。 Coons 賞は永年の CG研究への貢献を評価された人物へ贈られる CG 業界のノーベル賞ともいわれる大変素晴らしい賞です。 Nelson Max 氏は、1985年 EXPO の富士通パビリオンにて 公開された OMNIMAX-3D の作品「ザ・ユニバース」制作ディレクターを務めた人物です。

 Nelson Max 氏の公式サイト  http://www.llnl.gov/CASC/people/max/

また今年初の試みとして FJORG! というイベントが開催されました。 これは、3人組 16チームが 32時間ぶっ続けで15秒以上の CG アニメーションをその場で制作するというライブイベントです。 各企業から食べ物や機材の提供を受け、有名 CGプロダクションの 現場CGアニメーターが評価するという今回一番の活気を帯びたイベントでした。

多くの参加者の中、大学勢が特に良い作品を作り、グランプリを取得したのは Bowling Green State University: Team Mocap の“Switch”という作品でした。

FJORG!の会場風景

http://www.siggraph.org/s2007/attendees/fjorg/

■ ■SIGGRAPH Exhibition (展示会)

多くの人が行き来する SIGGRAPH が活気づく催しの一つとして Exhibition (展示会)があります。 コンベンションセンターの 1階の巨大な空間に 230社の企業が 大小のブースを並べ、SIGGRAPH 会期中後半の 3日間開催されました。

今年の特徴は、モーションキャプチャの製品が数多く展示されていたことです。 安価な製品から、手軽に使えるコンパクトな製品、 マーカーの必要の無い、新方式のモーションキャプチャなど、 数多くの製品が実演されていました。 より手軽に使えるようになり、業界のニーズも高いのが実感されました。

■ Organic Motion

http://www.organicmotion.com/

16台の CCD カメラを用いて、キャプチャー用のマーカー無し、 ビデオ映像のみでモーションキャプチャするシステムです。 例えば、著名なミュージシャンやダンサーなどのモーションデータを得たい場合、 体や顔に沢山のマーカーをつけるのが心苦しい時など、効果を発揮するシステムです。 4m x 4m の空間で利用し、基本システムで約 14,000ドルだそうです。

■ Xsens Technologies

http://www.xsens.com/

無線LANでキャプチャーデータを送信するスーツ型のモーションキャプチャシステムです。 追加センサーで、剣などの小道具の動きもキャプチャできるのが特徴です。

■ IBM BladeCenter QS20 (CELL ブレード)

http://www-03.ibm.com/technology/splash/qs20/

今回の SIGGRAPH では Sony PlayStation 3 で使われている Cell チップを応用したレンダリングシステムが各社から数多く展示されていました。 QS20のデモは 2個の Cell BE を搭載したブレード 7台で、 リアルタイムレイトレーシングのデモが行われていました。 計算ニーズの高まりが実感された展示でした。

■ Google Street View

http://maps.google.com/help/maps/streetview/

Google の展示ブースでは、Google Earth / Google Maps のデモ展示が行われるとともに、 ユーザインタフェース系のプログラマ・デザイナーの求人活動にも力が入れられていました。 また Google Maps 上で 360度風景を見ることのできる Google Street View の素材映像が上映されていたのが特徴的でした。

■ lynda.com

http://lynda.com/

SIGGRAPHの展示では、教育機関や教材を提供する企業の出展も数多くありました。 lynda.com は自学自習のための CD/DVD 教材を販売する会社です。 最近ではオンライントレーニングの他に Podcast での情報提供も開始しているそうです。

■ Aguru Images Technology (AGURU DOME, AGURU SCANNER)

http://www.aguruimages.com/

Aguru は今年初めての出展となる新しい企業でした。 AGURU DOME は LEDランプで全方位のライティング環境を再現できる環境とともに、 人物(主に顔)の三次元データと顔の質感(テクスチャデータ)をキャプチャするためのシステムです。 一方 AGURU SCANNER はデコボコがあったり、 クシャクシャの紙も最大 500枚の複数方向から質感豊かにキャプチャするスキャナーです。

■ FE Technologies

http://www.fe-tech.co.jp/

FE Technologies のブースでは 240Hz で動作する FED(Field Emission Display) の展示が行われていました。 映像素材は三次元レーシングゲームのものでした。 240Hz と 60Hz 映像の比較展示でした。 240Hz の FEDでは高速で移り変わる背景映像の中からも草木の一本一本まではっきりと観ることができたのが印象的でした。 ある研究によると 240Hz は人間の目の認知限界にあり、実像に近いものだそうです。

■ EON Reality : TouchLight

http://www.eonreality.com/

TouchLight は映画マイノリティリポートに出てきた様な未来的インタフェースです。 一見タッチスクリーン表示装置のように思われますが、 TouchLight はスクリーンに触れること無く、両手の動きだけで画面の操作が可能です。 仕組みは、画面の裏にある赤外線センサーが担っているそうです。約 5万ドルだそうです。

■ EyeTech Digital Systems

http://www.eyetechds.com/

EyeTech は視線でマウスの操作をコントロールできる特殊なディスプレイです。 製品として動作が安定しており、日本人のブラウンをはじめ、 様々な瞳の色でも正確にトラッキングできるそうです。 他にも同様の製品として tabii (http://www.tabii.com/) もありました。 tabii は目の動きだけで、キーボード・マウスの代用として使えるそうです。

■ OmniGlobe

http://www.arcscience.com/omni.htm

OmniGlobe は昨年はまだ商品ではなく、Emerging Technology に参考出展されていたものでした。 研究開発している技術が、早いサイクルで商品となり実用化されるのが SIGGRAPH で観られる技術の特徴でもあります。

■ CrazyTalk

http://www.reallusion.com/crazytalk/

CrazyTalk はデジタルカメラで撮影した一枚の写真から、 キャラクタがしゃべる映像を生成することができます。 人物だけでなく、ペットや、おもちゃなどもモゴモゴと口を動かしてしゃべらせることができます。 IP電話 Skype 用の CrazyTalk も用意されており、テレビ電話のアバターとしても使えるそうです。

■ Pixar

http://www.pixar.com/

Pixar のブースには「レミーのおいしいレストラン(原題 Ratatouille)」を模したテーブルが設置され微笑ましいものでした。 そんな Pixar は映画で実際に使われたレンダリングソフトウェア RenderMan の売り込みと、 優秀な人材を獲得するための求人活動に力を入れていました。

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SIGGRAPH の本分は学会であり、毎年多くの先進的な論文が発表されます。

 SIGGRAPH 2007 発表論文一覧
 (Tim Rowley氏による非公式なもの)
 http://trowley.org/sig2007.html

SIGGRAPH で採択される論文は、純粋なコンピュータグラフィックス研 究に加えて、 画像や動画像のイメージ生成/操作など実務に密着したものや、 ゲーム開発などに応用される技術など、多岐に広がってきました。

今年は論文の中に Big Images というカテゴリが増えました。 ハイビジョンを超えた4K 解像度、ギガピクセルといった 巨大な画像・映像に関する研究も進んできました。 デジタルカメラの解像度も飛躍的に増加し、 ハイビジョンよりも高解像度の映像表示装置が開発される中で、 SIGGRAPH の役目、意義はますます増加してくるものと思われます。

来年の SIGGRAPH 2008 (http://www.siggraph.org/s2008/) は 映画の街、ロサンジェルスで開催されます。 SIGGRAPH から登場するテクノロジーが 続々と観たことの無い新しい映像を生み出していって欲しいものです。[SD]

(来月号では、先進的な技術の紹介を中心として 引き続き SIGGRAPH 2007 の情報をお届けします)



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